遺言書を書くことができる人

 民法には、遺言についての規定が設けられています。その中で、次の人は遺言書を書くことができません。

 【遺言書を書くことができない人】
  ◆15歳に達していない人  ◆遺言する能力がない人

 言い換えれば、15歳以上で、遺言を残す能力があれば誰でも遺言書を書くことができるということになります。
 ここで「遺言する能力がない」が問題になります。具体的には、認知症を患っている人※がこれに該当します。また成年後見を受けている人も遺言に制限が設けられています。ですので、高齢の方など、遺言を残したい方は、認知症を患わない時に遺言書を書くことが必要になります。
  ※注意:成年被後見人であっても、一時的に回復し、医師2人の立ち会いがあれば遺言を残すことができる規定があります。

遺言書の種類

 民法には、遺言の方法として3つの「普通の方式」と、遭難者などの「特別の方式」の遺言方法が規定されています。一般的には「普通の方式」の中でも、「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2つの方法で遺言することがほとんどです。
  ●自筆証書遺言については、こちら
  ●公正証書遺言については、こちら

遺言書の効力

 民法には、死亡した時から遺言書の効力が生じると規定されています。存命中には何ら効力はありません。
 存命中からご自身の財産を保全し、お亡くなりになった後にスムーズに承継させる家族信託という方法が近年増えてきています。家族信託については、こちら。

遺言書作成の注意点(概略)

 民法には、遺言書の作成方法についても規定されています。詳細は「自筆証書遺言」「公正証書遺言」に記載しています。
 ここでは代表的な遺言書作成の注意点を4つ列挙します。
(1)共同遺言の禁止
 例えば、ご夫婦で1つの遺言書を作成するようなケースは禁止されています。※ただし、それぞれが遺言書を書いて簡単に2つに分けることができるようにステープラーで留めただけの場合は有効とする判例はあります。

(2)公序良俗に反する内容は無効
 例えば、遺産を愛人にすべて渡す、というような内容は無効となります。

(3)内容に不備がある場合は無効
 例えば、日付が明確に示されていないような場合など、民法に定められている方法で書かれていない場合は無効となる可能性が高いです。

(4)遺留分を侵害している場合は、相続時に問題となる可能性あり
 兄弟姉妹を除く法定相続人には、遺産の「最低限の取り分」が保障されています。これを「遺留分」と呼びます。この遺留分の割合を無視して遺言書を書いた場合、直ちに無効になるものではありませんが、実際に遺産を分けるときに問題となるケースがあります。
 例えば、長男に高額な不動産を遺産として渡し、それが遺留分を侵害していた場合、長男は侵害した部分を「金銭」で支払う必要があります。金銭があればいいのですが、不動産の場合はすぐに現金化できないため困ることになるケースがその例です。
   ※「遺留分」や「法定相続人」については、こちら

遺言書の作成が必要と思われる方

  • 事実婚(内縁関係)の方
  • 前の配偶者との間に子どもがいる方
  • 再婚され、再婚相手にお子さまがいる方
  • 相続人の中に、疎遠な人や心配な人がいる方
  • 相続人同士が不仲な場合
  • 相続人がいない方
  • 相続人以外の人や組織に資産を贈りたい方
  • 資産が多額であったり、不動産を多数保有している方
  • 事業承継が必要な方

遺言書の作成が必要ではないと思われる方

  • 子どもがお一人だけや、配偶者とお子さまお一人だけが相続人の方
  • 特段の資産をお持ちでない方
  • 資産の多くが金銭など金融資産のみの方

※上記の「遺言書の作成が特に必要と思われる方」「遺言書の作成が特段必要ではないと思われる方」はあくまでも例です。これ以外にも個別の事案によって該当するケースや、逆に例示はされているが該当しないケースがあります。詳しくはご相談ください。

遺言書についてよくある質問:Q&A

Q1: 一度書いた遺言書って、撤回できるの?

A1: 遺言書に「撤回する」旨を記載することで撤回自体は可能です。ただし、一般的には新しい遺言書を作成することで、前の遺言書を事実上撤回する形が多いかと思います。なお、遺言書の内容を変更したり追加することも可能ですが、厳格な様式が決められていて注意が必要です。

Q2: 財産のすべてを世界の子どものために寄付したいけどできる?

A2: 相続人がいない場合には可能ですが、相続人がいる場合にはその相続人に遺留分が保障されていますので難しいと思われます。どうしてもそのような寄付をしたい場合には、「死後贈与」の契約を生前に結んでおく方法などがあります。

Q3: 障がいのある孫のために遺産を使ってもらいたいけど遺言書で可能?

A3: 不可能ではありませんが、ご自身亡き後に、資金の使い道まで縛ることは適切ではないと思われます。そのような場合には家族信託契約(生前からご家族の方と財産の使い方についての契約)を結ぶことも方法の一つです。

Q4: 相続税ってどれくらいの財産からかかるの?

A4: 相続税を計算する際の基礎控除は、次の通りです。
    (相続税の基礎控除額)=3,000万円+(600万円×相続人の数)
 例えば、相続人がお二人であれば、4,200万円を超えた財産について相続税が課せられるのが基本となります。(4,200万円以下の財産なら相続税はかからない、ということです)
 ただし、あくまで基本的なものであり、これ以外の条件によっても変わってきますのであくまで目安としてごらんください。詳細は税務署または税理士さんにお問い合わせください。

Q5: 身体が不自由で文字がうまく書けません。

A5: その場合は、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言にしてみるといいでしょう。

Q6: 遺言書の内容は必ず実行されるんですか?

A6: 遺言書の効力は、亡くなった後に効力が生じます。遺言の「様式」が法に適していない場合は遺言書自体が無効となります。内容が適していない場合は、その内容について無効となります。
なお、遺言書の内容は、お亡くなりになられた方のご遺志ですので、最大限考慮すべきだと思います。一方で、承継される財産等をどのように処分するかは、残された方の意思を尊重するべきとの考え方もあります。そのため、相続人全員が遺言書の内容と異なる方法で財産等を承継するよう遺産分割協議をすることは可能です。
しかしそれだと「遺言者の遺志がないがしろになるのではないか」や「遺言内容が実行されないなら残す意味がない」と思われる方もいらっしゃることでしょう。遺言内容を確実に実行させる方法として、遺言書内で遺言執行者を決めておくといいでしょう。遺言執行者を選任しておけば、遺言執行者は遺言の内容を実現する義務があり、遺言執行者の就任で相続人は異なる協議を行うことができなくなります。

Q7: 遺言書が無効となる具体例を教えてください。

A7: 遺言書については、民法第960条で民法に従って作成することが規定されています。公正証書遺言についても公証人により作成されることことから無効になることは想定しにくいです。ですので、自筆証書遺言でこの民法の規定やその他判例等を基に、無効となる例をいくつか紹介します。
 ・認知症など遺言する能力に欠けている状態で書かれた場合。ただし成年後見人が一時的に回復した状態で、医師2名立会いで作成された遺言書は無効とはならない。
 ・ご夫婦で1つの遺言書を作成した場合。ただし、ご夫婦がそれぞれに遺言を書いたものを、ステープラーなどで留めただけであって、これを容易に切り離すことができる場合には無効とはならない。
 ・日付が不明な場合。例えば、「7月吉日」のような日付を特定できない記載。
 ・自筆証書遺言で、遺言書を筆記(手書き)していない場合。
 ・遺言書の訂正方法が、民法の規定に反した場合は、その部分について無効となる。
 ・他人がなりすまして遺言書を作成したり、偽造された場合。